ロアーの映画ログ(ブログ支部)

インスタにポストしている映画の感想をまとめるための支部

【舞台】ウィキッド

自分勝手で暴走しがちなキャラたちが感情をむき出しにしていて、どうしようもなく"人間"臭く思えて逆に愛おしい。

ウィキッド 2024年 - 日本

劇団:
劇団四季
キャスト:
三井莉穂 (エルファバ)
真瀬はるか(グリンダ)
若奈まりえ(ネッサローズ)
八重沢真美(マダム・モリブル)
カイサータティク(フィエロ
緒方隆成(ボック)
平良交一(ディラモンド教授)
飯野おさみオズの魔法使い)
原作:
グレゴリー・マグワイアウィキッド 誰も知らない、もう一つのオズの物語 上 (ハヤカワ文庫NV)

美人で人気者のグリンダと、緑色の肌で嫌われ者のエルファバ。後に"西の良い魔女"と"東の悪い魔女"と呼ばれることになる2人は、かつてはシズ大学のルームメートだった。初め反発し合っていた2人はやがて大親友となるが...



ウィキッド」と言えば、超有名で大人気のミュージカル。そんなミュージカルの10年ぶりの上演ということで、四季の会の先行発売だけでチケットが売り切れてしまって、一般発売ができなかったと言う点からもその人気の高さが分かる。当日劇場に行ってからふと、と言うことは全公演会員貸切上演なんだと気づいたんだけど、流石みんな拍手のタイミングも絶対間違えないのに素早いし、カテコのスタオベもザッ!と機敏で統率されたオタク過ぎて居心地が良かった。

実は私、10年前にも一度四季の「ウィキッド」を観てるので今回が2回目。でもその時は酷い偏頭痛が起きてしまって、観劇中はとにかく早く終わって欲しいと思っていたし、意識が朦朧としていて内容も覚えてなくて、ずっと悔やんでいたので今回はそのリベンジ観劇だった。

ウィキッド」って社会的なテーマも扱っていて思想も強めだし『オズの魔法使い』のあのキャラの過去は実はこうだったんだ〜という後付け設定と昼ドラみたいなドロドロの愛憎劇に「とんだ二次創作かよ!!」ってツッコミたくなるんだけど(まさしく二次創作なんだけど)そんな自分勝手で暴走しがちなキャラたちが感情をむき出しにしていて、どうしようもなく"人間"臭く思えて逆に愛おしい。
諸悪の根源であるオズの魔法使いが悪気もなく「善も悪も一緒」と言うシーンで怒りに震えたものの、あの人の存在ってとんだ曇らせ要素過ぎて割と好き。プリンス枠のフィエロも途中まで顛末を忘れてたのに突然あっ!と結末を思い出して「そうだった...くっ、またも曇らせかよ...悔しいけどこの展開...好きだぜ」ってバトル漫画の瀕死キャラみたいになった。多分「ウィキッド」のストーリーって、日本人が好きな類の曇らせ話だと思うんだ。「ゲゲゲの誕生」とか好きは人は多分好き(すごい偏見)。

そして何と言っても音楽!!
私にとってのミュージカル最高傑作は「オペラ座の怪人」で「ウィキッド」にはそこまで思い入れがないと思ってたのに、歌に圧倒されて気づいたらちょっと涙出てた。エルファバの飛行シーンの「♪自由を求めて(Defying Gravity)」の、三井さんの圧倒的な声量と歌唱力。
最近「アナ雪」も観劇して「♪ありのままで(Let it go)」も高音がすごい曲だけど、あくまでディズニーミュージカルであって「ウィキッド」ほど本気で歌唱力に左右される曲目のミュージカルじゃないなと思った。あの「♪羽ばたこう大空へと(I'm flying high, defying gravity)」で更に高音になるところ本気で重力に逆らうパワーを感じてやばくない?(泣いた)

グリンダ役の真瀬さんもすごくチャーミングだった。グリンダって外見も中身もザ・アメリカ人なキャラなのに、日本人が演じていても全然違和感なくキャッキャしてて、オリジナルキャストのクリスティン・チェノウスのグリンダっぽさに感激しちゃった。と言うか私、クリスティンが演じるグリンダを観たことがなくて普段のクリスティンのイメージしかないんだけど、でもオタクはない記憶を錬成して解釈で感激できるから。

2人が歌う「♪あなたを忘れない(For Good)」でまた涙が出たし、1曲目の「♪グッド・ニュース(No One Mourns the Wicked)」がフィナーレとしてリプライズされるのも、ミュージカル好きとしても文脈としてもたまらないやつで「ウィキッド」ってホント、オタクが完敗するしかないミュージカルだと実感した。
これはもう、四季劇場をディズニー作品のロングランが独占してることに文句を言われてもしょうがないよ。厄介なオタクの意見じゃなく正論だと思う。10年ぶりは流石に長過ぎたし、今度はもっと間を空けずもっと長い期間上演して欲しい。

もう一度観たいと言ってもブロードウェイに行くしかないので、そうなると映画を待つしかない。「ウィキッド」は私の中ではイディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウスが完成イメージなので、見た目の印象はかなり違ったものの、何で「ウィキッド」は映画化されないんだろう?とずっとずっと思ってたので、どんな結果になろうとも映画版もすごく楽しみ。


(2024/01/02)四季劇場:秋(S1席/1階9列サイドブロック)


www.youtube.com