ロアーの映画ログ(ブログ支部)

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【映画】ギルバート・グレイプ

ギルバート・グレイプ 1993年 - アメリカ - 117分

原題:
What's Eating Gilbert Grape
監督:
ラッセ・ハルストレム
キャスト:
ジョニー・デップ
レオナルド・ディカプリオ
ジュリエット・ルイス
メアリー・スティーン・バージェン
ジョン・C・ライリー
クリスピン・グローヴァー


小さな田舎街に暮らす24歳のギルバートは、夫が亡くなったショックで太り、家から出ることができなくなってしまった母親の代わりに一家の主として妹や知的障害の弟の面倒を見る日々を送っていた。そんなある日、毎年街を通り過ぎるだけだったキャンピングカーの一台が故障し、やむを得ず街に滞在することとなったベッキーと出会ったことで、ギルバートの心に変化が生まれる。



「フィルマークス90'」にて、約20年ぶりに鑑賞。
名作なのにあまりメジャーじゃないというか「名作映画は?」と聞いた時にあまり名前があがるタイトルじゃないというか...そう言う意味で比較的隠れた名作じゃないかと思っている今作。とはいえ確か「12ヶ月のシネマリレー」にもあったタイトルなので、そこまで隠れてもいないかな?
ジョニデとディカと言うアイドル的売れ方をした俳優が2人出ているせいで、作品にちょっとした偏見を抱いてる人もいるかもしれないけど、描写がすごく緻密で素晴らしい映画。「12ヶ月〜」の時はどうしてもスケジュールが合わずに泣いたので、今回のフィルマの企画で再上映してくれて本当に嬉しかった。

初見時は、初めてのセレブリティ・クラッシュだったジョニデ目当てで観たものの、とにかくディカの演技力の高さに圧倒されてしまってディカの印象ばかりが残っていたように思う。言い方が不適切かもしれないけど、ディカは本当の知的障害者にしか見えなかった。なので、今でも私にとってディカと言えば「タイタニック」よりこっちのイメージの方が強い。

そんなディカの演技力の高さを把握した上で観た今回は、しっかりジョニデ演じるギルバートに寄り添って観ることができて、観終わった後トイレに駆け込む羽目になるくらいボロボロに泣いてしまった。

今ならジョニデみたいな立場を"ヤングケアラー"と呼ぶのだと分かる。
父親が亡くなり、母親も頼りにならない...その場合、一番の年長者が責任を負うべきと言いたい訳ではないけど、それでもギルバートが実は次男だったことにも驚いた。ギルバートと違う選択をして街を出ていった息子の存在って衝撃だし、その一瞬のシーンの対比でギルバートと言うキャラの深さがグッと増していることにも感心した。

そんなギルバートが出会った自由の象徴であるベッキーベッキーに「望みは何?」と聞かれ、ギルバートが答えたのは家族のことばかり。自分のことを聞かれるとギルバートは「良い人間になりたい」と答える。

今でも十分過ぎるくらい良い人間なのに、家族の世話を一瞬でも煩わしいと感じたり、母親のことを少しでも恥じる気持ちがあったり、そんな自分を"良い人間"ではないと思っているギルバートに「だからあなたは誰よりも優しいのよ!」って叫びたくなった。マジでギルバートってワンピのサンジと同じ自己犠牲属性過ぎて困る。そのシーンがあまりにブッ刺さり過ぎて、思わずわんわん泣いちゃった。

家族や周りの人間みんなが「お前は街を出て行けない」と呪縛のようにギルバートを家に縛り付けていて、ギルバート自身もそう思い込んでいる。ギルバートと不倫をしていた人妻も、若くてハンサムだから不倫相手に選んだんじゃなく、自分と同じこの街を出ていくことができない人間だったからギルバートを選んだんだと今なら理解できた。「こうなるはずじゃなかった」と呟く母親の気持ちも痛いほどよく分かって、決して”毒親”と一言に責める気にもなれない。お互い愛し合う気持ちがあってもすれ違ってしまう...それもひとつの家族の形に違いないんだろうな。

20年前に観た時も確かに名作だと思ったけど、今はその時より何倍も解像度高く観れるようになった気がして、心の底から名作だと実感できた再鑑賞だった。つまり、少しは自分の精神が成長できてる証なのかな?

MEMO---
・今でこそそうでもないけど「タイタニック」の当時ってホント王子様イメージでディカを誤解してる人が少なからずいたから、その度に「この映画のディカを観て!」って言いたかった
・ジョニデにジョン・C・ライリークリスピン・グローヴァー。このとんでもなく個性的なメンツが、友人として同じテーブルを囲んで話をしているのを観て思わず鼻水出ちゃった


(2023/10/14)映画館(字幕)


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【映画】おしゃれキャット

フランスが舞台だからかダッチェスとオマリーの関係もどこか大人っぽくて、ディズニーなりのフランス映画っぽさがあるように思う。

【おしゃれキャット】 1970年 - アメリカ - 78分

原題:
The Aristocats
監督:
ウォルフガング・ライザーマン
声:
エヴァガボール
フィル・ハリス

母猫のダッチェスと3人の子猫たちは、裕福な老婦人に大事に大事に育てられているおしゃれキャット。しかし、老婦人が遺産を全て猫たちに相続するつもりだと知った執事のエドガーは、ダッチェスたちを眠らせ遠くに捨ててしまう。突然知らない場所で目覚めたダッチェスたちは、偶然出会った野良猫のオマリーに助けられ、パリへと帰ろうとするが...



「おしゃれキャット」は絵本を持ってた。ちょっとやそっとじゃ折れない子ども向けのでっかくてしっかりしてるやつ。

今ではマリーちゃんが人気だけど、私は昔から気品のあるダッチェスが好き。
なんと言ってもディズニーヒロイン唯一の”未亡人”でもあるから、ダッチェスは。
上流階級の余裕のある気品と未亡人の溢れ出る色気。
大枠のストーリーは猫版”わんわん物語”と言って差し支えないけど、フランスが舞台だからかダッチェスとオマリーの関係もどこか大人っぽくて、ディズニーなりのフランス映画っぽさがあるように思う。

主にマリーちゃんがトラブルメーカーで、我が子を助けてもらう度にダッチェスのオマリーに対する呼び方が「オマリーさん」「トーマス」「あなた」って変わっていくのが...映画も後半になるとオマリーの子猫たちを見る目が完全に保護者のそれになってるし、屋根の上で大人2匹だけになった時、オマリーがダッチェスに初めて出会った時と同じセリフをもう一回言うんだけど、最初の時はナンパの常套句みたいな軽いノリで言った感じの台詞だったのに、2回目のそれは思わず溢れてしまった本心って感じで、マジでさ、マジで大人の恋愛物語なんだよね。
子どもの頃はこういうところに気づかず観てたけど、マリーちゃんみたいにおませな女子だったらこう言う恋愛に憧れて「素敵!」ってなったりするのかな?

それと、ディズニー・クラシック時代の作品なので、絵のタッチも線画が生きててめちゃくちゃ素敵。列車ごっこをして歩いてる時の子猫たちの動きが可愛すぎてマジで身悶えた。


(2023/06/18)ディズニー+(吹替)


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【映画】Talk to me / トーク・トゥ・ミー

主人公ミアの抱える孤独が執着や依存に結びついていて、その人物描写が嫌に秀逸で緻密なところが逆にしんどい。

Talk to me / トーク・トゥ・ミー】 2022年 - オーストラリア - 95分

原題:
Talk to me
監督:
ダニー・フィリッポウ
マイケル・フィリッポウ
キャスト:
ソフィー・ワイルド
ジョー・バード
アレクサンドラ・ジェンセン
ミランダ・オットー

呪物の"手"を握って「Talk to me」と言い、霊を自分に憑依させる降霊ゲーム。母親を亡くした高校生のミアは仲間と共に降霊ゲームを楽しんでいたが、仲間の一人にミアの母親の霊が憑依し...



ホラー大好き、そして何と言ってもA24!
田舎住みなので都会よりA24作品の上映日が遅く (そもそも上映しないことすら多く)、今作も本当は地元では1週間遅れの公開だったので、いつものごとく"遅れがちの方のA24の女"になるところだったんだけど、ありがたくもフィルマのオンライン試写会に当選したので、今回だけは"珍しく遅れなかったA24の女"と名乗るよ。

Talk to me(話したまえ)」と言って呪物の"手"を握ると幽霊が見えるようになり、更に「I let you in(入るを許す)」と続けるとその幽霊に憑依される...ただし90秒以内に手を離さないとそのまま霊に取り憑かれてしまうという、お手軽だけどリスキーなコックリさん上級編のようなゲーム。

そもそもキャッチフレーズの"霊、ヤバい、キモチいい”というのも一体どういうことかと思ってたんだけど、降霊もそんな合法ドラッグのような使い方をされるようになったのか...

ただ、ハイになれると思いきやとんだダウナー系の映画。東京"怖コン"で初出し映像も観たので、もっと分かりやすく視覚的に怖い系の映画かと思ってたんだけど、どちらかと言うと精神的に来るやつだった。降霊ゲームというキャッチーさで釣りつつ、本質はもっと暗く深いところにあって、嫌〜な鬱い気分になるやつ。後、どっちかと言うと痛そうで「うわ!」っとなる系だった。

主人公ミアの抱える孤独が執着や依存に結びついていて、その人物描写が嫌に秀逸で緻密なところが逆にしんどい。「私は何も悪くない」と言いながら全部めちゃくちゃにするタイプの女にも見えて中々しんどかったし、ミアを取り巻く友人や友達家族の空気感も絶妙過ぎた。
若者のノリや軽薄さもリアルで、その辺はYouTuber出身である双子監督の経験と現代の感性なのかな?

若者の精神的な弱さと、それを満たしてくれると錯覚させて付けいってくる"何か"。
それは現実で言えばドラッグだったり性的なものだったりするのだろうけど、それをうまくホラーに結びつけた発想がお見事だった。「あ〜怖かった!」「あ〜面白かった!」とすっきり簡単には終われないところがA24らしい映画。印象的に使われてる黄色にも意味がありそうで考察しがいがある。
緊張感が保つので、ホラー映画の理想的なランタイムだと思っている90分台の映画というのも良きだった。


(2023/12/14)Filmarksオンライン試写会(字幕)

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【映画】コンクリート・ユートピア

エンタメ性を強化した「ザ・ロード」みたいな映画だった。

【コンクリートユートピア 2021年 - 韓国 - 129分

原題:
콘크리트 유토피아/Concrete Utopia
監督:
オム・テファ
キャスト:
イ・ビョンホン
パク・ソジュン
パク・ポヨン
キム・ソニョン
パク・ジフ
キム・ドユン

未曾有の大災害によって、一瞬にして壊滅してしまったソウル。そんな中、唯一崩落を免れたマンションには生存者たちが溢れかえっていた。生きるために決断を迫られたマンションの住民たちは、一人の男を代表に選び、余所者を排除しようとするが...



ひとことで言うなら、エンタメ性を強化した「ザ・ロード」みたいな映画だった。

発端となる災害の原因は明かされないし救助云々の話でもなかったので、これはディザスター映画ではなくアポカリプスやディストピアに分類される映画なんじゃないかと思う。

都市サイズのでかいモグラが地中から出てきて、地上が全部ひっくり返ったみたいな災害だったので、良い意味でリアリティは感じずに観れた気がする。災害の描写が雑な訳じゃなく、描きたいテーマは災害のその後に起きたことだと言うのが明白だった。
そもそも大災害の中で、一棟のマンションだけが無事というのもファンタジーだし、"ユートピア"と"あこがれの夢のマンション"、キリスト教の"隣人を愛せ"が文字通りのマンションの"隣人"となっているのも、なるほどうまいメタファーだと思った。

こういう映画を観た時、どうしてもどう行動するのが正しいのか"正解"を見つけようとしてしまうので、頭がオーバーヒートしそうになる。
他者に対して思いやりを持つことはもちろん大切だけど、心の底から他者を思いやっての善き行動であろうと、非常時においてはその行動が悪い結果に結びついてしまうこともある。冷酷な判断がより多くの命を救うこともあるし、どちらも悪いしどっちも悪くないという二律背反が両方とも成立してしまうのが非常時だと思い知った。
明確な極悪人が出てこず、常に選択と因果を突きつけられる内容だったので、考え込むと完全に煮詰まるから、とにかく自分と他者を天秤にかけなければならない状況に陥ることのないよう、祈るしかないのかも知れない。

ところで、実は予告もロクに観ずに鑑賞を決めたので「奈落のマイホーム」の逆バージョンみたいな内容かと思ってた。イ・ビョンホンもリーダーシップを取ってみんなを救うかっこいい役だと勘違いしていたので、まさかの怪演っぷりにびっくり。ポケモンの3段階進化並みにイ・ビョンホンが変わっていく。あと"韓流四天王"と呼ばれていた時代にすら、おそらくやってたことがなかったであろうアイドルっぷりを観せられてびっくりした。まさかこの映画でイ・ビョンホンの歌とファンサが飛んでくるとは...


(2024/01/06)映画館(字幕)


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【映画】K.G.F CHAPTER.2

貧しい産まれの少年が本気で国家を敵に回すような伝説的存在にまで上り詰めていた。

【K.G.F CHAPTER.2】 2022年 - インド - 166分

原題:
K.G.F CHAPTER.2
監督:
プラシャント・ニール
キャスト:
ヤシュ
サンジャイ・ダット
シュリニーディ・シェティ
プラカーシュ・ラージュ
ラヴィーナー・タンドン
言語:
タミル語
前作:
K.G.F CHAPTER.1(2018年 - インド - 154分)


KGFに潜入し、見事ガルダの首を討ち取ったロッキーは、労働者たちに英雄と崇められながら自らKGFの統治者として君臨する。しかし、金鉱を取り戻そうとする連中が次々とロッキーに牙を剥き、更には首相までもがKGFの存在を抹消しようと動き出し...



そろそろヒゲのおじさんたちの顔の見分けがつくようになった点と、敵対の構図がロッキー VS 全員という単純な構図になった点で、チャプター2の方が断然観やすかった。

1章の最後で「2章はまだまだこんなもんじゃない」と作家が煽るもんだから、いやいやこれ以上どうなるって言うの?言うてまあ...と思っていた私だけど、膝と手をついてお詫びします。
完全に見くびっていて誠に申し訳ありませんでした。めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ面白かった!!!

2章はスケールがデカ過ぎてとにかく圧巻。貧しい産まれの少年が本気で国家を敵に回すような伝説的存在にまで上り詰めていた。何がどうしてそうなったのか、口では説明できないので、もう「観て!」としか言いようがない。

KGFの労働者を弾圧から解放した後、自らKGFの管理者となったロッキー。KGFを手に入れるために殺し屋としてロッキーを差し向けた連中が当然黙っている訳もなく、ロッキー VS 全員敵というアウトレイジな構図に。しかも圧倒的正義な首相までもがKGFを潰そうとしてくる。

多勢に無勢でロッキーがしてやられることもあるけど、それに対して倍返し以上にやり返すのがロッキーという男の魅力のひとつだと思う。腕っぷしの強さだけじゃなく、頭の回転も速いのがまた痺れる。
獅子搏兎を体現していて、警察署の"ビッグ・ダディ"のシーンがめっちゃ良かった。熱くなった銃身で煙草に火をつけるシーン...そんなことある〜!?(でもこれはちょっと見たことある気もする)。

それとサンジャイ・ダットが出ているとは知らなくて、サンジャイに限りなく似ていて多分絶対間違いなくあれはサンジャイだけど、でもカンナダ語映画にサンジャイが出ているだろうか?と、0.001%自信が持てない敵が出てきたので、最後までサンジャイ99.999%として見てたんだけど、結局サンジャイ100%だった。ヴァイキングに傾倒してるとかで、見た目が完全にコスプレヴァイキングだったから、余計に疑わしかったんだよね。

観る前は1章2章で計5時間という時間にたじろいで絶対途中で寝てしまうと思ってたのに、蓋を開けてみたら面白過ぎてあっと言う間だった。
本国では公開期間が4年空いてたみたいだけど、これは続けて観た方が良いやつ。1と2を一緒に公開してくれたツインさんありがと〜!!

しかも先日「RRR」の爆音上映を観に行ったばかりの高崎電気館で観たら、今回も爆音か!?と思うほどの迫力。打撃音も重いし音楽も良いし、最高最強の状態で観ることができた。正直、もう私が観た日にはレンタルも開始してたので、一瞬レンタルでも良いかな?って考えも過ってたんだけど、「RRR」と同じく今作も劇場向きの迫力映画だったので、映画館で観て大正解!旅行に行く予定さえなければ、もう一回くらい映画館で観たかったなぁ...それくらい面白かった!

(2023/10/22)映画館(字幕)


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【映画】K.G.F CHAPTER.1

伝記作家の語りもめっちゃ煽ってくるもんだからさ...「そろそろ無双がくるぞ、くるぞ」とワクワクしちゃう。

【K.G.F CHAPTER.1】 2018年 - インド - 154分

原題:
K.G.F CHAPTER.1
監督:
プラシャント・ニール
キャスト:
ヤシュ
シュリニーディ・シェティ
ラマチャンドラ・ラジュ
アナント・ナグ
言語:
タミル語
続編:
K.G.F CHAPTER.2(2022年 - インド - 166分)


黄金郷<エル・ドラド>と呼ばれた幻の金鉱KGF。
かつてそのKGFを有したとされ、インド史上最も凶悪な犯罪者としてまことしやかな伝説として語られる男・ロッキー。その半生をかけてロッキーの著書をしたためた作家に取材が行われるが...



"「RRR」を超える大ヒット"という看板を背負った今作。
言うてまあ...と思っていた私だけど、膝をついてお詫びします。
完全に見くびっていて申し訳ありませんでした。めちゃくちゃ、めちゃくちゃ面白かった!!!

主人公ロッキーは「ぶっ飛ばす」ではなく容赦無く「ぶっ殺す」タイプの『ONE PIECE』のルフィって感じ。敵陣に真っ向から乗り込んで行くところや、信念のために突き進んで名を挙げていく点に既視感があって、海賊じゃなく陸の裏社会でギャングをやってる一匹狼のルフィって感じだった(ここまでくるともはや別もの)。
信念によって強さが増したり、明らかに覇王色の覇気を纏った存在であったり、敵を倒しても次から次へと新たな強敵が現れたり...神話要素の多いインド映画って、案外日本の少年マンガと通づるところがあるのかも?
それとやっぱりインドにおける報復の文化というか、倍返しどころか何百倍にもなっていてスカッとする!

アクションって実はそんなに得意ではない方なんだけど、インド映画って高確率でバリバリにアクションなんだよね。
得意じゃないはずのアクションに痺れるのは、インド映画ならではのあり得ない戦闘スタイル故かも。倒した敵の腕を掴んで、自らの髪をかきあげるシーン...そんなことある〜!?何度でも言うけど、インド映画はかっこいいシーンで臆面もなくかっこつけるので、かっこいいシーンが本気でかっこいい。
武器はハンマーってことも結構あるかも?なんか神器的なもののメタファーって聞いたことがある気がする。北欧神話におけるミョルニルみたいなものかな?それと牛刀とかククリナイフみたいなやつも多い気がする。今作では割と銃も使ってたけど、やっぱり一番は拳。

この手の英雄タイプの主人公って、あまりボロボロにならないうちに完全無双するイメージが強かったのに、このロッキーはボッコボコの血まみれになりながらも這い上がってくるのがまた痺れた。下町の貧しい少年が天下を取る話だから、さながらインドの「キング・アーサー」。ただし、ロッキーは出自がガチで貧乏なただの少年なので、余計にその壮絶な人生と王の風格に興奮した。

伝記作家の語りもめっちゃ煽ってくるもんだからさ...「そろそろ無双がくるぞ、くるぞ」とワクワクしちゃう。KGFでの暗闇のシーンなんて「バットマン・ビギンズ」の例のあのシーンみたいで最高に痺れた。

髭のおじさんの多さで誰が誰だか分からなくなる点や、語り部の下手さ(多分わざと)で時系列がごっちゃになる点さえ適当に理解したフリで乗り越えれば、2章に突入する頃にはすっかり理解できるようになってる筈だし、とにかくずっと痺れに痺れまくる映画だったのでかなりのオススメ。しかも第1章だけでこれだけ痺れたのに、実はこれはまだ2章への序章にしか過ぎなかったと言う...


(2023/10/22)映画館(字幕)


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【映画】カラオケ行こ!

観終わるとすっかり「♪紅」が頭から離れなくなるので、胸ではなく頭の中が紅に染まってしまう。

【カラオケ行こ!】 2024年 - 日本 - 107分

監督:
山下敦弘
キャスト:
齋藤潤
綾野剛
芳根京子
北村一輝
原作:
和山やま『カラオケ行こ! (ビームコミックス)

合唱部の部長を務める中学3年生の岡聡実は、突然、怪しい男に「カラオケ行こ!」と声を掛けられる。紋付の名刺を差し出した男・成田狂児は、組長の誕生日に開催される恒例のカラオケ大会で歌ヘタ王にならないよう、聡実に歌を教えて欲しいと言い出し...



試写会にて一足お先に観てきた。

女子校出身なのもあって『女の園の星』で和山やまにハマって、『カラオケ行こ!』の原作も履修済。映画化の話が出た時「狂児役には長瀬智也が良い!」とパッ!と思い浮かんだので、正直、綾野剛に決まった時はイメージが違い過ぎて少し残念だった。まあ、そもそも映画化が決まる前に長瀬智也が引退宣言をしていたので、元々無理な話ではあったんだけど...
映画を観た後もまだ狂児役を長瀬智也にやって欲しかったと言う気持ちは捨てきれないものの、綾野剛演じる狂児がダメだったかと言うと違くて、むしろすごく良かった。

あの、のらりくらりぬるりするりと距離を詰めてくる怪しさ。いや、物理的な距離はあからさまにぐいっと詰めてくるタイプなんだけど、てか狂児のあの感じってそもそも何?インテリヤクザとも違くて、何て言ったらいいの?ソフトヤクザ?
歌も下手ではないけど、うまいとも言いきれなくて微妙にウザキモい感じが絶妙だった。でも、聡実くんが選んだ曲を歌ってた時はちゃんと普通にうまくて、綾野剛って歌うまいんだね。それと黒服がすっごく似合ってて、スタイルの良さにも初めて気づいた。足がスッとしててめちゃくちゃ長い。あと、斜め上から聡実くんを見つめる瞬間に「今めっちゃ狂児だったわ」ってなった。

原作が前後編で終わる短めの話だからか、映画を観た後にもう一度原作を読み返したら、細かいところまで丁寧に映画化されてたことに気づいて感激したので、これはトータル的に見て原作ファンも納得する映画化だったんじゃないかな?漫画的なコメディ色が薄くなった分と映画の尺的に足された部分には、思春期と愛と「映画を見る部」が詰まってた。

原作の聡実くんはもっと擦れた性格しててそこが面白いんだけど、実写の聡実くんは原作以上に思春期してて初々しさがすごく可愛かった。
ヤクザにカラオケに連れて行かれる中学生って、リアルに実写で見ると確実に通報案件(笑)。ヤクザに囲まれて狂児の腕にしがみついてた聡実くんがめちゃくちゃかわい過ぎたし、カラオケ店で自分から距離を詰めて行くところとか「元気をあげます」とか、端々に"ヤクザは嫌いだけど狂児は特別"感が出てて子犬過ぎた。

それとやっぱり"カラオケ"が重要な要素の作品なので、実際に歌が加わったのは実写化における大きな強みだったと思う。
ラストの聡実くんの「♪紅」がどうなるのか期待と心配が入り混じった感情で真剣に見守っていたら、あまりに良過ぎておばちゃん...ちょっと泣けたで。エンドロールのリトグリの合唱版「♪紅」も良かったし、観終わるとすっかり「♪紅」が頭から離れなくなるので、胸ではなく頭の中が紅に染まってしまう。

(2024/01/09)映画館 / 試写会

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