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【映画】ZOO

妻たちの死によって"死"と"腐敗"に取り憑かれた双子が、ひたすら死体の腐敗の撮影を行うという、説明しながら変態過ぎて思わず笑っちゃうような作品。

【ZOO】 1985年 - イギリス - 115分

原題:
A Zed & Two Noughts
監督:
ピーター・グリーナウェイ
キャスト:
ブライアン・ディーコン
エリック・ディーコン
アンドレア・フェレオル

動物園に勤めている学者のオズワルドとオリヴァーは、自動車事故で同時に妻を亡くしてしまう。妻たちと同乗していた友人のアルバも片足とお腹の子どもを失い、そんなアルバと双子はやがて関係を持つようになるが...



グリーナウェイ監督って本当に天才的な変態(褒め言葉)だと思ってるのに、これまで観た2作ではほとんど"変態"という言葉を使わずに感想が書けてしまった。内心「おや?おかしいぞ」と思っていた。「数に溺れて」なんて大好きな作風だったけど、でも内心「まだまだ監督の変態っぶりはこんなもんじゃないだろう」と言う気持ちがあった。

そんな少しのモヤモヤを抱えながら観た今作———
「よっ!変態っ!!お見事!!!」
今度こそ、間違いなく変態による変態映画だった。

妻たちの死によって"死"と"腐敗"に取り憑かれた双子が、ひたすら死体の腐敗の撮影を行うという、説明しながら変態過ぎて思わず笑っちゃうような作品。

前回観た「数に溺れて」が1から100なら、これはA to Z。Appleから始まった腐敗の撮影は、当然のようにより大きな生き物の腐敗へと向かい、Zebraまで行き着いたその先も半ば予想通り。予想通りではあるんだけど、そのラストにものすごく皮肉が効いていて、グリーナウェイ監督の変態っぷりを確固たるものにしていた。最悪過ぎるて(笑)。

監督の特色である絵画的な映像は今作でも健在だし、「コックと泥棒、その妻と愛人」のような大きな空間での引きの映像も見応えがあったものの、"腐敗"が根幹にあるので映像美とは中々言いづらくて、まあ、はっきり言うとウジとか...あとエスカルゴも大量に出てくるので、苦手な人はホント無理だと思う。でも不思議とグリーナウェイ作品って汚い筈のものも客観的に観れるし、タイムラプス映像や暗い部屋で瞬くカメラのフラッシュが芸術的で全然嫌悪を感じなかった。
Dog Dot Dalmatian...つい油断してたけど、私が1番苦手とする要素もしっかりがっつりあったにも関わらず。

映像のインパクトはもちろんのこと、やっぱりグリーナウェイ作品って台詞回しも魅力的。今回は中々難解だったものの、洒落た言い回しからあけすけなセリフまで英国らしさ全開で「双子なんだから精子なんてほとんど一緒」だとか、中々のパワーワードもぽんぽん出てくる出てくる。

「死とは対称性を失うこと」

でもやっぱり、この台詞が重要だったと思う。
はじめはあまり似ていなかった双子の容姿が映画が進むにつれてどんどん似通って行く。やがて双子の秘密も明かされて、欠けたものを補うように双子の対称性は増すばかり。
死を観察しながら対称性を強く求めるのは、生に固執してるようにも思えるけど、でも結局のところ生と死も表裏一体のシンメトリーなのかな?
生と死、腐敗と誕生、光と影、白と黒———映画を構成する概念や要素も全て対称的だったと言えて...うん、ホント変態の極みだった!(くれぐれも褒め言葉)

それと今作はルノワールの絵画とも関連が深いらしく、私はその辺の知識が全くなくてほげ〜っと口を開けて観ているばかりだったので、もっと勉強してからまたいつかもう一度観てみたい。

(2024/07/01)映画館(字幕)/ ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師


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