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【映画】英国式庭園殺人事件

映画のフレームの中に、さらに絵画を描くための四角フレームが配置されていて、何だか絵画の中の絵画という入れ子構造のような不思議な感覚があった。

【英国式庭園殺人事件】 1982年 - イギリス - 108分

原題:
The Draughtsman's contract
監督:
ピーター・グリーナウェイ
キャスト:
アンソニー・ヒギンズ
ジャネット・サズマン
アン・ルイーズ・ランバート
デイヴ・ヒル

貴族のハーバード夫人は、夫婦の不仲を解消するため、画家のネヴィルに夫が外出している12日間で夫が妻よりも愛してやまない屋敷の絵を12枚描くように依頼する。ネヴィルは契約に夫人との肉体関係を付け加えることで、その依頼を引き受けるが...



開催のお知らせから数えたら、もう半年くらい待ってた「ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ」をようやく、ようやく観てきた!

1本目はまず「英国式庭園殺人事件」。

黒と白を基調とした貴族の衣装が庭園のグリーンの背景に映える。
グリーナウェイの映画って本当に舞台的かつ絵画的で、映画のフレームの中に人物や物が絶妙に配置されていて、監督の頭の中には一枚の絵画のような完成図が常に見えてるんだろうなぁといつも思う。
描きかけの絵画にパサっとのったドレスシャツの袖。胸をはだけて気怠げに横たわる夫人と画家。カメラが周り込まない平面的な画角だからこそ、その向こう側を想像させる日傘の裏の情事...やっぱりグリーナウェイって超変態(褒め言葉)。

しかも今作は映画の重要な要素に"絵画"があるので、映画のフレームの中に、さらに絵画を描くための四角フレームが配置されていて、何だか絵画の中の絵画という入れ子構造のような不思議な感覚があった。

いかにも英国的な会話劇から始まり、庭園に散りばめられて絵画に写し取られて行く異質な"それら"に気づかされた頃には、もうすっかり映画に引き込まれてた。傲慢な態度だった画家の形勢もいつの間にか逆転していて、一体どこからどこまでが誰の思惑だったんだろう?とこちらまで翻弄されて、本来ならモヤモヤしてもおかしくない筈なのに、何故かこの煙にまかれる感覚が心地よかった。

しかも、すごーく、ものすごーく異質な存在が平面的な映画の中でやけに立体的に蠢いていて、余計にこの不思議な感覚を増長させる要因になっていた。こう言うところから、バッチバチにアリ・アスターが影響を受けてそう...でも客観的な映画を作るグリーナウェイと違って、アリちゃんはとにかく自分の内面を曝け出す映画を作るから、映画から受ける印象は全く違うところが面白い。

(2024/06/22)映画館(字幕)/ ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師


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