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【映画】プロスペローの本

"本物の人間で描いた絵画"とも言えそうな圧巻の映像。

【プロスペローの本】 1991年 - イギリス・フランス - 126分

原題:
Prospero's Books
監督:
ピーター・グリーナウェイ
キャスト:
ジョン・ギールグッド
マイケル・クラーク
ミシェル・ブラン
エルランド・ヨセフソン
イザベル・パスコー

弟アントーニオの策略によって故郷を追われた、かつてのミラノ大公・プロスペロー。幼い娘ミランダと共に小舟で孤島に流れ着いたプロスペローは、友人ゴンザーローが持たせてくれた24冊の本で偉大な力を習得し、復讐劇の戯曲を書き始める。



ピーター・グリーナウェイ・レトロスペクティヴ鑑賞4作品目にしてラストの一本!あっと言うまに観終わっちゃった。

今作はタイトルの"プロスペロー”という名の通り、シェイクスピアの『テンペスト』が原案とのこと。ゴンザーローが持たせてくれた本についての解釈と冊数を拡げた24冊の本をベースにお話が進む&プロスペローが戯曲を書いているという設定なので確かにオリジナル要素は強かったものの、戯曲の内容は台詞も展開もほぼ『テンペスト』そのままだったので、ピーター・グリーナウェイ演出の「テンペスト」と言っても良いと思う。

冒頭からもう圧巻の映像!!
退廃したギリシャ神話のような世界をゆっくりと歩いていくプロスペローに合わせ、横にスクロールしていく長回しのカメラ。中世の西洋画を絵巻にしたような映像で、周りの人々は絵画のように静止している人物もいれば動いている人物もいるので、絵画に潜り込んだような感覚と神々の世界を描いた絵画を端から鑑賞している感覚とが同時に襲ってきて、現実離れした荘厳な映像にとにかく圧倒された。このシーンだけでも映画を観る価値がある。

本について語る冒頭のシーンは「ピーター・グリーナウェイ枕草子」の演出と重なる部分があって「枕草子」からグリーナウェイを知ったせいか無性に「今、グリーナウェイを味わってる!」という気持ちが高ぶって変なところで感動してた。

まだ観れていないグリーナウェイ作品もあるものの、今作がおそらく一番登場人物が多そう。とは言え名のある役は『テンペスト』の登場人物くらいで、その他大勢の人々は時に背景と同化して画面の中にたたずんでいて、"本物の人間で描いた絵画"とも言えそうな映像がずっと続いていた。衣装もセットも本当に素晴らしくて、視覚から入ってくるボリュームがすごい。

個人的な好みとしてはやっぱり監督の作品の中では「数に溺れて」が1番好きだけど、映像表現もろもろ総合的にみると、1番高く評価したいのはこの「プロスペローの本」かも知れない。
こんな感性でこんな映画を創り出せるのは、本当にピーター・グリーナウェイしかいないと確信した。

最後の最後にメタ要素を入れてくるのも、ブリティッシュジョークみたいで面白かった。

(2024/07/03)映画館(字幕)/ ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師


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