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【映画】イノセンツ

あのモンスターは、ただ親に愛されたかっただけの子どもだったんだよ...

【イノセンツ】 2021年 - ノルウェーデンマークフィンランドスウェーデン・ - 117分

原題:
De uskyldige/The Innocents
監督:
エスキル・フォクト

妹のイーダと発達障害をもつ姉のアナは、越して来た団地で特殊な能力を持つベンやアイシャと友達になる。やがてアナにも能力が目覚め、4人が集まると能力が増すことに気づいた子どもたちは、その力で遊び始めるが、その遊びはやがて危険なものへ変わっていき...



また北欧からとんでもない映画が来た...こういうの大好き。
映像表現としての怖さと、心理的な怖さ、社会問題的な怖さが見事に合さった秀作だと思う。

冒頭の数分の車中のシーンから、すでに察せられてしまう姉妹の関係性。
「イノセンツ」と言うタイトルも秀逸で、子どものする悪いことって必ずしも大人のような悪意がある訳じゃなくて、好奇心やその先の結果を想像することのできない未熟さ、瞬間的な怒りに対する衝動性だったりする。自らが行った酷いこと・おぞましいことに対して、後になってから子どもたちが泣き出すのがすごく印象的だった。

直接的に描かれているシーンはさほどないにも関わらず、それでもはっきり見て取れてしまう子どもたちの家庭環境もお辛い。比較的愛されていそうなアイシャの子どもらしくむちむちでかわいいねと思っていた姿にすら、母親からの一種のネグレクトの片鱗が見て取れてあぁ...となった。
なんだろうな...カメラが静かに映す家庭の一片は、現実で言うならば横目でチラッと見てあぁ...やっぱりと鬱な気分になる感じ。ホントこういう表現がうまいよな、北欧映画。

大人だって人間なのでどうしようもないことはある。でも、その影響をダイレクトに受けてしまうのは純粋な子どもたちだという現実。
大人に言ってもきっと信じてもらえないサイキックパワーと同様、子どもたちの心の叫びも大人にはなかなか理解できないことなんだろうと思う。その抑圧がサイキックパワーとして発露したようにも思えるし、パワーが純粋な感情そのものでもあるのかも。

ラストの公園のシーンも、子どもたち全員がそうではなかったことに潜在的なものを感じて恐ろしくも悲しい気分になったし、大人は何も気づかず静かに収束するのが切なかった。あのモンスターは、ただ親に愛されたかっただけの子どもだったんだよ...


(2023/10/21)映画館(字幕)


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