あくまでエンツォ・"フェラーリ"という男についての映画だった。
【フェラーリ】 2023年 - アメリカ・イギリス・イタリア・中国 - 130分
原題:
Ferrari
監督:
マイケル・マン
キャスト:
アダム・ドライバー
ペネロペ・クロス
シャイリーン・ウッドリー
この直前に観た「チャーリー」で目が腫れるまでボロ泣きしたせいで、泣き疲れてうとうとしちゃったんだけど(赤ちゃんかな?)、「オッペンハイマー」とどこか似た肌触りのする映画だった。
もっとレースや車について触れている内容かと思いきや、だいぶ「エンツォ・フェラーリと、妻とその愛人」の要素が強かった。
初めのうちは「ペネロペ・クルスって本当に凄みのある病んだ女が似合うな〜」なんて軽い気持ちで観てたけど、夫婦の冷えた関係性の背景が見えてくると、これは病んでも仕方ないと妻に同情してしまう。
エンツォも妻も喪失で心に深い傷を負ったのは確かだろうけど、そこから互いの傷を癒そうとするのではなく、互いに傷つけ合って更に傷を増やす結果になってしまった...でもこれはこれで仕方ない夫婦のひとつの形だったんだろうとも思う。しかもこの一家の機能不全っぷりって、夫婦間だけで始まった訳じゃなく、エンツォの母の毒親っぷりから既に歪んでいたんだろうと思うとやるせなくもあった。
映画の雰囲気としては、車のおもちゃや花束などなど、セリフではない部分から読み取れる描写も多めで好きなタイプの表現方法だった。思わず「うわぁっ...」と引いてしまって、気持ちがず〜んとなるとしても、こういう無言の表現はかなり好き。
それとレースについて全然詳しくはないけど、レース界の有名なエピソードや事件についてはある程度知っていたので、寸前までそれがフェラーリ絡みだったことは忘れていたものの、途中で「あ、これって私が知ってるあのレースだったのか..」と気づいてしまって一気に暗い気分になった。何が起きたか知っていても、実際に事件の描写を映像で観ると中々ショッキング。映画館でも「あっ」って思わず声に出ちゃってた人がいた。
事件後の描写も含めて「オッペンハイマー」と似た肌触りを感じたのかも知れない。フェラーリはフェラーリでも、これはあくまでエンツォ・"フェラーリ"という男についての映画だった。
(2024/07/07)映画館(字幕)