単なるエンタメに留まらない映画の持つパワーを存分に感じさせる映画。
【ジガルタンダ・ダブルX】 2023年 - インド - 172分
原題:
Jigarthanda doublex
監督:
カールティク・スッバラージ
キャスト:
ラーガヴァー・ローレンス
S・J・スーリヤ
ニミーシャ・サジャヤン
イラヴァラス
ナビン・チャンドラ
警察官採用試験に合格したキルバイは、ギャングによる虐殺の濡れ衣を着せられ、着任の前に無実の罪で逮捕されてしまう。
その後、模範囚として服役していたキルバイに、危険因子の暗殺を条件とした警官復帰のチャンスが訪れる。ターゲットであるギャングのボス・シーザーがクリント・イーストウッドの西部劇に心酔しており、自作映画の脚本を募集していると知ったキルバイは、自らを有名な映画監督サタジット・レイの弟子と偽り、見事シーザーが主演を務める映画の監督に抜擢されるが...
単なるエンタメに留まらない映画の持つパワーを存分に感じさせる映画で、初めて年間劇場鑑賞本数が100本を超えた2024年の映画館納めとして、最高にふさわしい映画だった。久々に「すごいものを観た」と言う感覚を味わって、鑑賞後もしばらく余韻に浸ってぼんやりしてしまったくらい。
真実かそれとも勘違いか、子どもの頃、クリント・イーストウッドの西部劇の撮影現場に遭遇したというギャングのボス・シーザーは、映画館を所有し、コスプレをするほどクリントに心酔している。
クリントからもらったという8ミリカメラが本作における重要で重要で重要なアイテムになっていて、初めはカメラをオモチャの銃だと勘違いしていたシーザーをバカにするようなアイテムだったものが、映画が進むにつれ、本当の銃へと見立てられて行く。
命を狙う相手であるシーザーに8ミリカメラを向けるキルバイ。
キルバイとシーザーが互いに銃とカメラを突きつけて向き合うシーンは、思わずぞくっとくるものすらあった。
最初は血を見るだけで発作を起こすほど気弱だったキルバイ、そしてギャングのボスという立場から真逆の存在へと変わるシーザー。
みるみる変化して行く主演2人の鬼気迫る演技もすごく良かった。
インターバル前のここまでのストーリーでも十分過ぎるほど熱いのに、後半はもっともっとすごい。この映画が単なるキルバイとシーザーの因縁の物語ではなかったと気づき、映画の本質そのものすら見誤っていたと思い知らされる後半。武器と化したカメラを向ける先がどんどん変化して行くだけじゃなく「映画を武器に」という本作の骨子すら、もっと大きく重厚な意味合いに変化して行くのがすさまじい。メタファーとテーマが映画という媒体に見事に融合した脚本には圧倒されるしかなくて、ラストは泣いた。「こういう映画に出会えるから、映画好きはやめられないぜ」と言っても全然過言じゃないかも...
(2024/12/30)映画館(字幕)