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【映画】憐れみの3章

これを”憐れみ"と訳した人は、中々シビアというか意地悪だなぁ〜と思った。

【憐れみの3章】 2024年 - アイルランド・イギリス - 164分

原題:
Kind of Kindness
監督:
ヨルゴス・ランティモス
キャスト:
エマ・ストーン
ジェシー・プレモンス
マーガレット・クアリー
ウィレム・デフォー



かな〜り好きなタイプの映画だった。3時間近くて尻込みしてたものの、章ごとのお話だからあっという間で、体感は90分映画だったし。

まず、ユーリズミックスの「♫Sweet Dreams」から始まるところからして好き。難解そうな映画を観る時、自分がノートに書くように頭の中にメモしながら観ていることを、映画館歴約20年目くらいにして初めて知ったりもした。

例えば今回は、

・主要人物の名前がみんなRから始まっている
 →追記: R.Fの人たちがたくさんいる

みたいな。でも結局、今作はさほど難解な話ではなくて、むしろヨルゴス監督の作品にしては分かりやすかったと思う。

3章に共通するテーマは、"信じる"ということかな?それに対して"Kind of Kindness"というタイトルがついていることについては、英語のニュアンスが複雑過ぎてなんとも難しいけど、これを”憐れみ"と訳した人は、中々シビアというか意地悪だなぁ〜と思った。

1章は1番スタンダードないわゆる神様を"信じる"ことの寓話だと感じた。この手の信仰を持っている人が総人口数的にも1番多そう。章が進むごとにレアケースになってた気がする。
聖書なりなんなり、神の教えや定めを信じて...ある意味、流されて生きてる方が楽だったりする。でも、神や運に見放されたと感じた時、急に何がいけなかった?と焦って理由を探したり責任転嫁したり、なんとか帳尻を合わせようとしたりするのが人間。神やそれに相当する存在側からすれば、これこそ洗脳し、依存させるテクニックだとも思った。

続く2章は、まだ共通のテーマがあることを理解してなくて、自分でタイトルをつけるなら1章は"信仰"で、2章は"疑惑"かな?と思ってた。
でも2章も"信じる"ことができなくなった、あるいは自分自身だけを強く"信じる"、もしくは思い込みを"信じる"パターンだったように思う。

2章のはじめは、ヨルゴス監督なのにスティーブン・キングの作風過ぎて、どしたどした?ってなったけど、色々狂い始めてからはしっかりヨルゴス節で安心した。1番猟奇的なのが2章。でもこれも噛み砕けば、夫婦や男女のすれ違いってこんな感じよね〜っていう稀にあるお話なんだと思った。
ないところに煙を立てたり、愛情を試したり、勝手な理想を作り出して現実を否定したり。あるもので満足しないと〜と自分に言い聞かせたり、そこまでしろとは言ってない、そんなことはやってないと言い分が食い違ったり。
このお話では統合失調症レベルに歪んでいたものの、案外稀にある話をヨルゴス流にセンセーショナルに味付けするとこうなる的なお話だと感じた。

それと、最初にほーんのちょっとしか出て来なかったドッグタグの不思議さにちゃんと気付けていて良かった。なぜドッグタグ?とも思ったけど、後に絡んでくる犬と関係してるのかな?この辺は良く分からず。犬の件諸々2章が1番おふざけ。

3章はいわゆるカルト宗教を"信じる"お話。
「章が進むごとにレアケースになってた気がする」って先に書いたけど、、、そう、だよね?3章が1番レアケースだよね?私が知らないだけで、逆にこれが1番よくあるケースだったらどうしよう?そう考えると色々と恐ろしい話だった。
カルト宗教=詐欺で献金を騙し取ろうという俗物的な目論見があるならまだしも、主導者自身も心底この行いこそが正しいと信じてるのが1番怖いパターン。このお話が1番分かりやすかったけど、主人公たちは何かを"信じる"あまり本当に大切にすべきものを見失っていたので、そう思うと確かに"憐れみ"を感じてしまう。

とにかく、3章ともオチがみ〜んな皮肉的だったから、ヨルゴス監督のことを捻くれおじさんだと認識した。嫌いじゃない。むしろ好き。

3章とも案外、完全に異世界や異次元的なお話じゃなかったように思う。それでもこの映画を非日常的に感じるのは、もちろん監督が加えたエキセントリックなエッセンスの影響に違いないけど、それにプラスして、どうして彼らがここまでの信仰・盲信に至ったかが描かれていないからかな?とも思った。

今作も人によってだいぶ受け取り方にバラつきが出そう。私はかなり好きだったものの、意味のわからない変な映画と思う人がいてもそれはホントそう。今更ながら、こんな風に寓話を噛み砕いて身近な話に落とし込んだ感想を書いたことも野暮だったのでは?と感じていて、観たままを受け入れても良かった気がしてる。

とりあえず、まずは自分が感じたことだけで感想を書こうと思って欲しかったパンフも買わなかったから、また次に映画館に行った時にでも。パンフを読んだら、また作品の受け取り方が変わりそう。

MEMO--
・最初の「♫Sweet Dreams」好き過ぎたけど、今にして思うと「世にも奇妙な物語」の「♪チャララララ〜」に相当するのかも。米圏なら「トワイライト・ゾーン
・ピンク衣装の時のデフォおじの髪型が超好きだった。派手なおパンツもかわよ。裸も何なら女性陣よりセクシーだった❤︎
・ヨルゴス監督が毎回動物虐待描写を入れてくるのでだいぶ耐性がついたし、なんなら監督って実は逆に動物大好きなんじゃ?と思い始めた
・マーガレット・クアリーがなんかすごく良かった。特に3章。ところで乳首と乳首の間の距離はなんか意味があるの?www
・R.M.Fってなんぞ?と思ったけど、エンドロールのRobert Mなんたら foundationではないよね?深い意味があるのか、実は身内ネタなのか、こういうのって本当に判断がつかない

(2024/10/10)映画館(字幕)


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