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【映画】悪い子バビー / アブノーマル

幼児の知能を持った大人が外の世界に出て何を学ぶのか?

【悪い子バビー / アブノーマル】 1994年 - オーストラリア・イタリア - 114分

原題:
Bad Boy Bubby
監督:
ロルフ・デ・ヒーア
キャスト:
ニコラス・ホープ

部屋の外は毒ガスに汚染されており、この部屋から出たら死んでしまうと教えられ、母親から狭い部屋に35年間監禁されていたバビー。長年姿を消していた父親が帰ってきたことから事件が起き、バビーは初めて外の世界に出るが...



随分前に観て、その時は気力が湧かなくてすっかり感想を書かずに溜めてしまっていたものの、「哀れなるものたち」を観たら今作との共通点も多い映画だったので、ようやく気合いを入れて感想を書くことにした。

35年間母親によって監禁され、狭い部屋の中で育ったバビーが出会った初めての外の世界。まともな会話すらできないバビーは一見すると精神障害者に見えるけど、劇中で出てきたセリフのように「バビーはただ子どもなだけ」。幼児の知能を持った大人が外の世界に出て何を学ぶのか?

母親によって誤った倫理観や情報で育てられたバビーには善悪の区別もつかなくて、ただ母親から"悪い子"として叱られてきた経験しかない。
バビーは自分の言葉で話さず、自分に浴びせられた他者の言葉を使って会話をする。でも、ただオウム返しする訳じゃなく、その状況に合った言葉を過去の記憶から選んで発しているところに、バビーの思考が見えるのが面白かった。受け売りの言葉を吸収して自分の言葉にしていくのも"学び"の形だよね。

バビーの出会った色々な人たちの言葉や経験がバビーを形作って行く...時には宗教戦争や重度身体障害者など、バビーにはどうしようもない問題に触れて泣いたりもする。

共通点が多いと言いつつ「哀れなるものたち」を好きな人に「悪い子バビー」を勧めるかというとそうではなくて、まあ率直に「バビー」の方は汚いからね。ざっくり言うと「悪い子バビー」は、もっと分かりづらくてフェミ要素少なめで汚くてより観る人を選ぶ類のカルトムービーな「哀れなるものたち」です(別物過ぎる)。

主人公はハゲ散らかしたおじさんだし、旅するところも素敵な外国じゃなくゴミ捨て場や留置所。死体も動物虐待もGも出てくるし、エッグタルトなんて洒落た食べ物でもなくてピザ。ただ、ピザに関しては初めて食べたまともな食事がピザだったら絶対ピザ中毒になる。美味しいよね、ピザ。
エッチシーンもそこそこあるんだけど、100kgオーバーのママから性的虐待も受けていたバビーは(正直映画の中でこのシーンが一番しんどい)、ママみたいにでっかいおっぱい以外はダメなおっぱいという性癖になってて、新しいことをたくさん学んだのにその性癖だけは最後まで定着しちゃったのがひたすら可哀想だった。でもまあ、それはそれで良いのかな?うん、本人が良ければ良いか。性癖に正解なんてないし。

散々、汚い汚いと言ってしまったけど(事実なので)、なかなか衝撃を受ける映画だったし、ライブシーンのように激しくめまぐるしい世界の中で、最後にバビーが見つけた真理や安らぎにはちょっと涙が出そうになった。

何より音や音楽が印象的に使われている映画で、普通の映画より音が大きく耳に送り込まれてくる。どうやら音にも相当こだわった手法が使われてるらしく、五感のうち映画という媒体が刺激できる視覚と聴覚にすごく重みを持たせた映画だった。
バビーと共に外の世界で初めて音を知った気分にもなったし、エンドロールに流れる美しい音楽を聴きながら訳もわからず泣きそうになったりもして、映画館で観て良かった。

(2024/01/20)映画館(字幕)


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