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【映画】ヴィクラムとヴェーダ (ヒンディー語版)

善か悪か。モラルか感傷か。

【ヴィクラムとヴェーダヒンディー語版)】 2022年 - インド - 157分

原題:
Vikram vedha
監督:

プシュカル&ガーヤトリ
キャスト:
リティク・ローシャン
サイフ・アリー・カーン
オリジナル:
ヴィクラムとヴェーダ(タミル語版)(2017年 - インド - 141分)

警察の特殊チームに所属するヴィクラムたちは、中々姿を現さないギャングの大物ヴェーダを捕らえるため、正当防衛に見せかけた偽装襲撃によってギャングの手下たちを次々と殺害していた。そんな折、ついにヴェーダが現れたとの情報を得たヴィクラムたちは、機動隊を率いてヴェーダの逮捕に向かおうとするが、まさにその時、警察署にヴェーダが自ら出頭してきて...


【1回目鑑賞】

2024年インド映画始めはリティク出演の「ヴィクラムとヴェーダ」。地元での上映が始まるまで待つつもりだったけど、やっぱり我慢できずK'sシネマまで遠征して観てきた。

私がリティクにハマったのがちょうどコロナ禍直前くらいで、その間インドの映画撮影も一時期ストップしていたため、リティクを推し始めてから初めての新作だったので期待度もマシマシ。

言葉は汚いけど...もうさ、リティクがバチクソかっこよかった。

リティク演じるヴェーダは、怪物的な存在として恐れられているギャングで、暴力や人殺しにためらいなど一切見せず、むしろ不適な笑みを浮かべながら飄々と人を殺すという私的に大好物なタイプの役だった。でも根は優しくて弟思いで街のみんなからも好かれまくっていて、敵には容赦ないのに身内には甘々というギャップもたまらない。

対するサイフ・アリー・カーン演じる警官のヴィクラムは、真面目で優秀ではあるけど"犯罪者なら殺しても良い"という考えの持ち主。
そんな考えの元で警察が行なっていた偽装襲撃に関しては、正直今まで観てきたインド映画にまともな警察がほとんど出てこなかったせいで、あまり悪いことと思えなかった。偽装襲撃も賄賂も汚職もインド警察ならみんなやってるイメージ(え)。
今作における恋愛要素はほぼこのヴィクラム夫婦の担当で、サイフ・アリー・カーンって見た目強面だしムッキムキの大男なんだけど、奥さんとのいちゃつきシーンでは時折ニッコニコの笑顔を見せていてめちゃくちゃかわいかった。洋画でいうデイヴ・バウティスタみたいなかわいさ。

警官と犯罪者。追う者と追われる者。一見シンプルに見えるけど、善も悪も見方や立場を変えればころっと簡単に入れ替わってしまうもの。
年明けから何故か善悪を問うテーマの映画ばっかり観てるんだけど(「善き人」や「コンクリートユートピア」)、今作に関しては善と悪だけじゃなく、善と善、悪と悪を天秤にかけなければならない時にどっちを選ぶか?と言う問いかけに改めて考えさせられた。
実はこの問いかけに乗った時点で負けというか、同じ穴のムジナな気もする。対立していた2人が同じ敵に向かって共闘するのも熱かったし、どこまでも同じで、どこまでも違う2人の関係にピッタリなラストもすごく好きだった。

あと、ヴェーダが名を挙げるきっかけとなった誘拐事件での戦闘シーンが、雑誌の撮影かと見まごうくらいばっちばちに決まっていて好き。リティクがあまりにかっこよ過ぎて戦闘シーンというよりMVみたいだった。
そもそも胸元が始終えっちだったとか、ヒゲがない時の色気がすごいとか、裸足にサンダルとか足が長くてデニムが似合いすぎるとか色々言いたいことはたくさんあるんだけど、元々はタミル語映画「ヴィクラムとヴェーダー」のヒンディー語リメイクだからか、リティクの役に女っ気が一切なかったことに驚きを隠せない。女子とのいちゃつきダンスのないリティクの映画って初めて観たかも。
唯一のダンスナンバー「♪Alcoholia」も周りは基本おじさんばっかり(ただし、少数精鋭の女子ダンサーの衣装がえっちですっごくかわいい)。てか「♪Alcoholia」ってカメラワークまで神がかってるし、映像も振り付けも音楽も全部大好き過ぎる。

ただ、女っ気がない分ヴェーダの愛情はほぼ全て弟に注がれてた。
兄弟間のお決まりのコミュニケーションというのが、手のひらにおいでと迎えられるタイプの小顔ポーズで(画像3枚目参照)そのシーンを観る度、思わず心の中で「ヒィ〜〜❤︎」と叫んじゃった。
先月コミコンがあったから、セレブとどういうポーズで写真を撮るかめちゃくちゃ考えてた名残でついリティクとの撮影ポーズも妄想してたんだけど、いつかリティクと写真を撮る機会があったら、私はあの弟ポジションのポーズで撮りたい。リティクの手のひらの上に私の二重顎を乗せに行くんだ...あらゆる意味で死ねるよね

(2024/01/08)映画館(字幕)


【2回目鑑賞】

ヒンディー語版2度目の鑑賞。
ポスターも買えたし入場特典のポストカードも貰えたし、満足度がすごいよ。

リティクのキラキラっぷりにやられてよく目が開かなくなってた1回目と違って、2回目鑑賞の今回は半目くらいはかろうじで開けて観られたので、ヒンディー語版の方が、ヴェーダのバックボーンや内面を深掘りできそうな描写が増えてることに気づけて良きだった。大筋はタミル語版と全く同じなのに、演出と付加要素によってキャラに深みが出てたように思う。

ヒンディー語版で増えた要素は、具体的に言うとヴェーダのバイオレンスな描写とキラキラっぷりと弟との関係性という、一見ただのエンタメっぽい要素なんだけど、違うんだよ。エンタメ要素と同時に深掘り要素も満たしてるんだよ。

タミル語版のヴェーダは喧嘩に割って入った弟を嬉しそうに称えてたけど、ヒンディー語版のヴェーダは弟を犯罪に関わらせたくない気持ちが一貫して強くて、弟が見ていないところではタミル語版同様、弟の勇姿を見て嬉しそうな顔してるのに、いざ弟が劣勢になると一気に表情が変わって静かに本気でキレてるし、弟本人には危ないことをするなって叱ったりする。
こんな風に弟への愛情深さがより丁寧に描かれてる分、ヴェーダの世界が弟とそれ以外でしかないことにも気づいてしまって、なんだかお辛くなってしまった。

ヴェーダの暴力って本当に容赦がなくて、何のためらいもなく的確に骨を砕くし、何の感情も揺らさないで人を殺したりする。時には暴力を楽しんですらいるし、そんな残忍さと弟への深い愛情、どっちもヴェーダという人間に違いなくて、正気のまま狂ってるような底の知れない怖さというか、自分がもし死ぬことになっても笑っていそうな恐ろしさがある。
なんか、ヴェーダの人格って、ギャングとして登りつめるずっと前から既に破綻してそう。やっぱりお父さん関係で何かあったのかな...?

ヴィクラム妻からの「なぜヴィクラムに執着するの?」って台詞もヒンディー語版だけの台詞だったと思うんだけど、ヴェーダがヴィクラムに抱いてる気持ちって、根っこでは似た者同士だと思ってるのはもちろん、ヴィクラムの真面目さへの尊敬と侮蔑が同時にありそうだし、いつか自分も悪として裁かれることの覚悟...というより、裁かれる時がくるのが当然だと受け入れつつも、それがいつになるのか楽しんでるような節もあって、なんかそういう感情を全部ヴィクラムに向けて「さあどうする?」って問うてる感じの執着っぽくて刺さる。

タミル語版を観た直後だと、ヴィクラムことサイフ・アリー・カーンの登場シーンの過剰な音楽や全体的に派手めなBGMにちょっと笑っちゃいそうになったけど、ヒンディー語版の方がヴィクラムの警官としての立場や倫理との葛藤が分かりやすかったのも良き。

善か悪か。
モラルか感傷か。

ヴェーダに善悪を問われて答えた矢先、自分の過去の行動と矛盾していることに気づいて狼狽えるヴィクラムが良くて、わりと尊厳破壊映画だよね、これ。あのラストも、ちゃんと境界線を挟んで立っていることに今回初めて気づいて胸熱だった。

なんて言うか本当、リメイクはこういうリメイクが良いのよ...ちゃんとオリジナルのテーマや文脈やキャラクター性を理解した上で、更に深みを加えてくる類のリメイクがっ!まあ、監督脚本がオリジナルと同じ人たちだからこそできたことかも知れないけど、インド映画に限らず、こういうリメイクならもっとどんどん摂取したいと思った。

MEMO---
・あのコンテナの雨のシーン。タミル語版だと警官への不信感から町民が動いた感じだけど、ヒンディー語版は街のみんなから愛されてるギャンスタで良き
タミル語版の感想に書き忘れたのでここに書く。ヴェーダを助ける時の笑顔の半熟に泣かされた。このシーンはタミル語版の方が刺さった
・チャンダーのセリフが少し抑えめになってて、やっぱりタミル語版のチャンドラは流石に調子に乗り過ぎだったよね〜と思った
・「♪Alcoholia」のカメラワークがホント神がかってるし女の子たちかわいいしおじさんたちもかわいいし最高


(2024/04/07)映画館(字幕)/ インド大映画祭



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