臨場感に飲まれて脳をめちゃくちゃにされるのが正しい観劇方法って気がする。
【舞台 魍魎の匣】 2019年 - 日本 - 128分
キャスト:
橘ケンチ(中禅寺秋彦)
高橋良輔(関口巽)
北園涼(榎木津礼二郎)
内田朝陽(木場修太郎)
高橋健介(鳥口守彦)
紫吹淳(柚木陽子)
西岡德馬(美馬坂幸四郎)
吉川純広(久保竣公)
原作:
京極夏彦『文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫 き 39-2)』
戦後間もない昭和20年代後期。
世間では連続少女バラバラ殺人事件が紙面を騒がせていた。
線路に突き飛ばされ、瀕死の重傷を負った少女の事故現場に偶然居合わせた刑事の木場。
死に瀕した富豪の遺産に関わる調査を依頼された探偵の榎木津。
雑誌記者の鳥口と共に怪しい新興宗教を調べることとなった作家の関口。
古本屋の主人・京極堂の元へ持ち込まれたそれらの事件は、やがてひとつの事件へと繋がっていく。
京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」中、もっとも人気があるのがこの『魍魎の匣』だと思うし、私がシリーズ中一番好きなのもこれ(鵺は未読)。
ただ、原作を読んだのが10年以上前なので、だいぶ内容を忘れていてコミックでざっと情報を補完した。
舞台が始まった途端「テンポ早っ!」って感じたけど、時々すっごくテンポの早い舞台ってあるよね。あくまで体感なので段々慣れて普通のテンポに感じるんだけど、あの分厚い原作だから「ソーシャル・ネットワーク」の手法みたいにテンポが速めなのかな?それでも2時間程度にあのお話をまとめたのはすごいとしか言いようがない。ただ、少女たちの関係性や木場刑事の掘り下げはちょっと浅かったかも(でもまあ仕方ない)。
ケンチさんの京極堂は、芥川龍之介に寄せたビジュだけどちゃんと腕力もありそうだった。物理的にもそこそこ強そうで、たぶん瓦割り3枚くらいは行ける。
榎さんはスピンオフの『百鬼徒然』の印象の方が強いせいか、もっとはちゃめちゃで破天荒なイメージだったけど、本編のシリーズではわりと真面目でこんな感じなんだっけ?もはや記憶が古過ぎて正解が分からない。北園さんの足がものすごく長かったことだけは確か。
役者はもちろんのこと、シンプルな舞台がすごく良くて、背景も箱を意識した壁になっていたり、大きな箱型のフレームを使って部屋に見立てたり、回想シーンのコマ割りとして利用していたりと、シンプルかつ機能的ですごく良かった。
回想や語りのシーンで後ろにしっかり役者が登場して演技してるのも親切設計。これぞ"演劇"の手法って感じだし、ただでさえ複雑なお話だから視覚情報はすごく大事。プロジェクションマッピングを使った原稿用紙の描写も良かった。
"憑きもの落とし"が始まった後半は京極堂だけじゃなくみんなものすごく声を張ってて、動画で観ていても「声量すごっ!」ってなった。
小説だと"憑き物落とし"ってもっと淡々と静かなイメージだったけど、こうやって舞台での掛け合いを観ると、確かに言霊バトルやマインドハックバトルみたいな要素があるかも。生で観たらひたすら迫力に圧倒されちゃいそう。てか、この舞台って絶対に生で観るべき案件だったと思う。臨場感に飲まれて脳をめちゃくちゃにされるのが正しい観劇方法って気がする。
ところで『魍魎の匣』ってミュージカルにもなっているらしくて、この内容でミュージカル???と困惑しかないので、いずれ配信に来たら観てみたい。
(2024/08/15)U-NEXT