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【映画】裏切りのサーカス

監督、脚本、原作、撮影、役者、衣装、何から何まで上質の上質をすくって作られた一点ものの高級品のような作品。

裏切りのサーカス 2011年 - イギリス・フランス・ドイツ - 128分

原題:
Tinker tailor soldier spy
監督:
トーマス・アルフレッドソン
キャスト:
ゲイリー・オールドマン
ベネディクト・カンバーバッチ
コリン・ファース
マーク・ストロング
トム・ハーディ
トビー・ジョーンズ
ジョン・ハート
原作:
ジョン・ル・カレティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕



あることから英国諜報部《サーカス》を去っていたスパイのスマイリーは、サーカス幹部にいる二重スパイ《モグラ》を探るという任務を命じられる。


地元の映画館で、ギャガ・アカデミー賞特集として「裏切りのサーカス」が上映されると知って大喜びしたものの、まさかの1日限りの上映。
なぜ?なぜなの??なぜ1番観たい「裏切りのサーカス」だけが1日だけなの?この日に観に行けなかったら悔しすぎて暴れてやる!と内心大荒れだったんだけど、実は日本での上映権が切れるその日限りの上映だったらしい。み、観れて良かった〜!!一日限りになってしまうと知りながらも、それでも上映してくれて本当にありがとう〜!!!

公開当時すでにベネファンだったので、映画館で上映してくれたら絶対観に行ってた筈なんだけど、当時は地元で上映がなかったからレンタルで観て、観た直後にもう一回観て、それと数年前にいつメン上映会で観ることになって、その昼に予習として一回観て夜に上映会で観て、今回が5回目かな?
どんなに気にいった映画でもあまりリピしない派なので、5回ってもはや歴史に残るよ。それくらい好きな映画...というか、あまりに傑作過ぎて好きともなんか違くて、この感情を言葉でうまく表現できない。

とにかく、監督、脚本、原作、撮影、役者、衣装、何から何まで上質の上質をすくって作られた一点ものの希少な高級品みたいな映画。仕立ての良いスーツのようにスマートかつスタイリッシュに余分なものを削ぎ落としていて、言葉少ないセリフが裏の裏までの意味を含んでいるし、セリフすらないほんの一瞬のシーンで様々な感情や物事を語っていたりする。そんな1から10を読み取るような作品なので、想像力と論理的思考のどっちもフル回転になるし、登場人物の多さから一見複雑な内容にも見えがちなので(整理すると案外そうでもない)、最低でも2回は観て欲しい作品。理解度が増すほどこの作品のすごさも分かるので、その点でも最低2回は観て欲しい。

演技力の化け物揃いの英国俳優たちが、尊敬する役者としてこぞって名前を挙げるゲイリー・オールドマンの演技にも改めて恐れ入った。スクリーン越しにもグッとくるものがあったのに、これを生の演技で見せられたら身震いしちゃいそう。
宿敵カーラとの邂逅を語るあの一人芝居のようなシーンは観る度に魅了されるし、ラストの階段の手すりを握るシーンにもハッとした。ほぼ手だけだよ...手だけの演技であんなに感情が伝わってくるなんて。そしてそれを的確に拾うカメラや演出...こんなにもワンシーンワンシーンを一瞬とて見逃すことのできない映画って他にないかも。


(2024/04/20)映画館(字幕)/ギャガ・アカデミー賞受賞作品特集上映


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以下、ネタバレ感想










ジムとビルの関係の匂わせって、こんなに少ない情報しかなかったっけ?写真とパーティーのシーンくらいしかなくて今更ながらびっくりした。でもここで原作から改変が入ったギラムと彼氏の関係性がヒントになってるわけでしょ?しかも最初の方では、そのビルとギラムが"ブロンドのベリンダ"の話しててさ...しかもコメンタリーで知ったけど、ギラムが通りすがりの女性を振り返ってまで見てる芝居までしててさ...一瞬だよ?ほんとに一瞬のシーンだよ???はああぁ、なんなのもうこの人物像のきめ細かさは。

アンが一度もはっきりと顔を見せない演出もお見事だった。
男社会の映画だからというのもそうだし、あのスマイリーを揺るがすほどの女であるアンをあえて実態化させず、観客の想像力に任せることで何倍も魅力的な存在に押し上げてるのが恐れ入る。それを言うならカーラの正体を見せないのもそうだよね。

ターの「タイプじゃないのに」って台詞も、そのイリーナがあんなにあっさり殺されるのも、なんとも言えない気持ちで感情がぐっちゃぐちゃになる。しかもターがイリーナの死を知らずに終わるのも...

電車のレールと思考回路をリンクさせてる演出も好きだし、ラスト、普通なら頭を撃つところで目の下を撃つのも、あれってビルが真っ直ぐジムを見つめてたってことだし、ジムもジムでビルの目を撃つことはできなかったってことでしょ?その瞬間のコリンの表情も一筋縄じゃ読み解けない絶妙な表情で、はあああぁぁあ〜なんなんだもう、読み取れば読み取るほど底が深くて狂いそう。好き。この映画大好き!!凄すぎる!!!よし、もう一回観よ!